「高級食パン専門店のパンって、なんでこんなにもちもちしてるんだろう?」そう思ったことはありませんか?あのもちもち感、実は「湯種(ゆだね)」という製法が大きく関係しています。
湯種という言葉、パン作りを始めたばかりの方には少しとっつきにくく聞こえるかもしれませんが、仕組みを知ってしまえば「なるほど!」と納得できるはず。この記事では、湯種とは何か・どんな効果があるのか・作るときに気をつけることを、初心者の方でもわかるようにゆっくり解説していきます。
湯種(ゆだね)とは?
湯種とは、小麦粉や米粉などの粉に熱湯を加えて練り混ぜ、でんぷんを糊状に変化させたもののことです。「湯ごね法」と呼ばれることもあります。
この糊状になる変化のことを「糊化(こか)」と言い、別名「α化(アルファ化)」とも呼ばれます。
でんぷんの糊化って何?

少し難しく聞こえますが、実はとても身近な現象です。
たとえば、生の白米はそのままでは固くてとても食べられませんよね。でも水を加えて加熱すると、ふっくらもちもちのご飯に変わります。これがまさにでんぷんの糊化です。でんぷんに水と熱が加わると、それまで整然と並んでいた粒子の構造が崩れ、水分を大量に抱え込んだ糊状の状態に変わります。
パン作りでも同じことが起きています。粉に熱湯を注いで混ぜることで、粉の中のでんぷんが糊化し、もちもちとした食感のもとになる「湯種」ができあがるのです。
湯種はイーストを使わない
「発酵種と何が違うの?」と思った方へ。湯種にはイーストを一切加えません。あくまでも「でんぷんを糊化させた生地の一部」であり、発酵種(中種法・液種法など)とはまったく別物です。混同しないようにしましょう。
湯種を使うと何が変わる?メリット・デメリット
湯種を使うことで、普通に作ったパンとは明らかに違う仕上がりになります。メリット・デメリットについて解説します。
メリット
① もちもち・しっとりした食感が生まれる
でんぷんが糊化することで、生地がたっぷりの水分を抱え込みます。それが焼き上がったパンの、あの独特のもちもち感につながります。
② 小麦粉本来の自然な甘みが引き出される
糊化したでんぷんはアミラーゼという酵素の影響を受けやすくなり、生地の中に糖分が増えます。砂糖を加えた甘さではなく、素材そのものの甘みが増すのが特徴です。
③ パンが固くなりにくい(老化が遅れる)
でんぷんが老化してパサパサになる現象をパンの「老化」といいます。湯種を使うと水分保持力が上がるため、この老化がゆっくりになります。翌日・翌々日もやわらかさが続くのは大きなメリットです。
デメリット
湯種の割合が多くなるほど、生地がのびにくく膨らみが悪くなることがあります。熱湯を加えるとグルテン(パンをふくらませるための網目構造)が形成されにくくなるためです。そのため、湯種を使いすぎると生地がうまくつながらず、ふっくら感が出にくくなります。
一般的に、湯種の量は全体の粉量の20〜50%で使われることが多いですが、初心者には20%前後から始めるのがおすすめです。
湯種はどんなパンに向いている?
もちもち感を生かせるかどうかが向き不向きのポイントです。
向いているパン

- 食パン(角食・山型)…もっとも定番。高級食パン専門店のあのもちもちは、湯種製法によるものが多い
- ちぎりパン…もちもち感が存分に楽しめる
- コッペパン・バターロール…やわらかくしっとりした食感に仕上がる
- クッペ…外はさっくり、中はもちもちという対比が楽しめる
日本人が好む「やわらかくてもちもちしたパン」全般と、湯種はとても相性がいいと言えます。
湯種を作るときの注意点
湯種は「混ぜるだけ」ではあるのですが、いくつかのポイントを外すと、せっかく作っても効果が半減してしまいます。
① 熱湯は87℃以上のものを使う

でんぷんの糊化を十分に起こすには、高温のお湯が必要です。目安は87℃以上。ぬるいお湯では糊化が不十分になり、湯種を使った意味がなくなってしまいます。
お湯の温度が下がると糊化が進まず、仕上がりの状態も悪くなってしまうため、やかんや電気ケトルで沸かしたお湯を、時間をおかずすぐに使いましょう。
② 素早く、しっかり混ぜる

熱湯を加えたら、温度が下がる前に素早く練り混ぜます。粉と熱湯が均一に混ざることで、でんぷんの糊化がまんべんなく進みます。ダマが残らないようしっかり混ぜましょう。
なお、加えた直後の水分量の目安は「全体がひとまとまりになるくらい」です。水っぽくなりすぎず、かといって粉が残らない状態が理想です。
③ 粗熱をしっかり取ってからラップをする

混ぜ終わったらラップで包み、室温で休ませます。生地はかなり熱い状態なので、やけどには十分注意してください。
④ 小麦粉の湯種は一晩冷蔵庫で寝かせる

小麦粉で作る湯種は、粗熱が取れた後に冷蔵庫で8〜12時間以上寝かせる必要があります。
「作った直後はボロボロしてる…失敗した?」と思う方もいるかもしれませんが、大丈夫です。寝かせることで水分が生地全体に均一に広がり、翌朝にはお餅のようなもちもち状態に変わっています。この「一晩置く時間」も、湯種のおいしさを作る大切な工程のひとつです。
米粉の湯種は寝かせなくてOK!

最近は米粉を使った湯種という方法もあります。米粉は小麦粉と違い、もともとグルテンを含んでいません。小麦粉の湯種を一晩寝かせる理由のひとつが「グルテンの状態を落ち着かせるため」なのですが、グルテンがもともとない米粉の場合、粗熱が取れればすぐに本ごねに使えます。
「今日作って今日焼く」が叶うのが、米粉の湯種の手軽さ。前日から仕込む時間がないときや、気軽に挑戦したいときにはこちらが向いています。
よくある疑問Q&A
レッスンでよくある質問と、その解決法をまとめました。
Q. 一晩寝かせないと使えないの?
小麦粉の湯種の話になりますが、冷めれば使うこと自体は可能です。ただし、一晩寝かせることで甘みとうま味がさらに増し、もちもち感が安定するため、時間があれば寝かせた方がおいしく仕上がります。どうしても時間がない場合は、室温で1時間程度休ませるだけでも使えます。
なお、米粉の湯種は寝かせてもほぼ変化しないため、この話は当てはまりません。冷めたらすぐ使えるのが米粉湯種の大きな魅力のひとつです。
Q. 粉と熱湯の割合はどのくらい?
基本は粉1:熱湯1(同量)が一般的です。ただし熱湯を少し多めにすると粉全体に行き渡りやすく、初心者でも扱いやすくなります。小麦粉や米粉の種類により異なるので、まずはレシピ通りの分量で作ることをおすすめします。
Q. 湯種を使ったら膨らみにくくなった。どうすれば?
これは湯種あるあるの悩みです。湯種を加えるとグルテンが形成されにくくなるため、どうしても生地が膨らみにくく、窯伸びしにくくなります。対処法としては最終発酵(二次発酵)を通常よりしっかり目にとることが有効です。また、湯種の割合を増やしすぎないことも大切で、初心者は全体の粉量の20%前後から始めるのがおすすめです。
Q. 湯種を作ったら、何日間保存できる?
冷蔵庫で2〜3日が目安とされています。時間が経つほど風味や状態が変わってしまうので、作ったら乾燥させないようにして、なるべく早めに使い切るようにしましょう。
Q. 強力粉以外でも湯種は作れる?
薄力粉でも湯種を作ること自体は可能ですが、グルテン量が少ないため生地のつながりが弱くなります。ふつうのパン作りには強力粉か、米粉での湯種がおすすめです。
Q. 湯種を使った生地はこね方が違う?
湯種を加えた生地はグルテンが形成されにくいため、台にたたきつけるようにこねる「たたきごね」が効果的です。グルテンを強化する助けになります。
まとめ
湯種は「粉に熱湯を加えてでんぷんを糊化させたもの」。この一手間が、もちもち・しっとり・甘みのある、翌日もおいしいパンを作り出してくれます。
むずかしそうに見えて、やっていることはシンプル。小麦粉で作るなら前日仕込みが必要ですが、米粉の湯種なら当日OKなので、初心者でも気軽に試しやすい方法です。もちもちパンの世界、ぜひ一度体験してみてください。
まずはキットで体験してみませんか?
「いきなり一から作るのはちょっと…」という方に向けて、湯種を使ったパン作りをそのまま体験できるキットをご用意しています。米粉の湯種を使うので、前日から仕込む必要なし。当日、材料を合わせてこねるところからスタートできます。あおさの香りが生地に溶け込んだプレーンと、ベーコン&チーズを包んだ贅沢な2種類のクッペが1回で作れます。
